環境 News Archive

2023年7月31日
合成燃料(e-fuel)の現状

EUが2035年以降、合成燃料(e-fuel)限定でエンジン車容認したことにより、経済産業省は二酸化炭素(CO2)と水素でつくる「合成燃料」の商用化の目標を2030年代前半に前倒しした。
合成燃料のメリットとして、下記が挙げられる。
・CO2は出すがCO2が原材料なのでカーボンニュートラル
・車、船、飛行機等、既存の内燃機関エンジンが利用可能
・ガソリンスタンド等、既存の供給インフラ設備が利用可能
合成燃料は主にENEOSや出光興産等の石油元売り大手で研究開発が進んでおり、日揮も2030年までに合成燃料生産に使う触媒を量産すると今月発表、また合成燃料の導入促進に向けた官民協議会が発足している。
課題となっているのが、製造技術が未確立なのと高コストだ。ただ革新的な製造技術としてさまざまな方法が研究開発の段階にあり、製造効率の高い技術が研究目標とされている。今後自動車が電動化されるまでのリリーフ役、また電動化が難しい航空機や船舶中心に利用されるとも言われているが、革新的な技術開発によっては、内燃機関の共存の道を開く可能性もありそうだ。


2023年6月30日
水素基本戦略を6年ぶりに改定


政府は今月「水素基本戦略」を6年ぶりに改定、GX推進法でも水素の製造、活用は脱炭素の柱の一つであり、「脱炭素、エネルギー安定供給、経済成長の“一石三鳥”をなしうる産業分野」と位置付けている。水素の利点としては、燃やしてもCO2を出さない、再エネで水素を製造して貯蔵可能、また水素で発電等出来、脱炭素社会は“再エネ+水素”の社会との考えもある。
水素基本戦略の主なポイントは下記の通りだ。
・官民合わせて15年で15兆円の投資
・水素供給量を現在200万トンから2040年までに1200万トン
・水素産業戦略として、水電解装置等9分野を指定し、水素産業競争力強化
世界各国における水素製造や利用の取組は下記の通り日本より本格的な状況だ。
・米国は国家クリーン水素戦略にて2030年までにクリーン水素の製造を1000万トン
・欧州委員会も2030年までにクリーン水素の製造を1000万トン、加えて1,000万トンのグリーン水素を域外から輸入
・水素製造の先進国カナダでは、2030年までに水素の国内供給量を年間2,000万トンに拡大
ただ前回2017年の基本戦略での各目標が全て未達成だったため、今回の水素基本戦略では、水素ステーションや燃料電池車導入、生産コスト、水素供給量等の国内製造率やクリーン水素割合等の具体的な数値目標がないが、単に数値目標に止まらない、世界の水素情勢に負けない、本腰の官民含めた取り組みが必要になりそうだ。


2023年5月31日
GX推進法、今月国会で成立も、欧米との差が顕著に

産業革命前からの平均気温が1.5℃を超えると、加速度的に気候が変動し、深刻な脅威が予測されているが、今年3月国連IPCCの発表では既に1.1℃上昇し、2015年の国際的枠組みであるパリ協定での温室効果ガス削減目標を各国が達成出来たとしても、近い将来に1.5℃に達する可能性が高く、今後10年の人類の選択と実施される対策が数千年にわたり影響を与えると公表した。国連総長は「全ての先進国は2035年までに、その他全ての国々は2040年までに、温室効果ガスの排出量を正味ゼロの発電を確保すること」と呼びかけている。
日本でも今月、通称「GX(グリーントランスフォーメーション)推進法」が成立した。正式名称は「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」である。
法案内容としては、
①国は20兆円を再生可能エネルギー、電気自動車、蓄電池、水素・アンモニア、省エネ技術等、脱炭素化に支援。
②20兆円の財源として「GX移行債」を発行。
③「GX移行債」の返済財源として、2028年から化石燃料の輸入業者等に「賦課金」と、2033年から電力会社などに排出枠買取れせる「排出量取引」を導入。
④「賦課金」や「排出量取引」を一元的に執行する経済産業省管轄の「GX推進機構」を創設。
経済産業省が作成したこの法案のスキームに心配されることが4点だ。
①リスクを含むスキーム
原発や火力も対象のGX移行債の買い手がつくか、賦課金や排出量取引のみで返済可能か、スキーム作成からGX推進機構での仕切りまで一つの省で偏らないか
②石炭アンモニア混焼等、脱炭素の方向性の判断
莫大な脱炭素への労力や投資の方向性に間違いはないか、先のG7気候・エネルギー・環境大臣会合でも石炭アンモニア混焼が批判対象に
③2030年の排出削減目標(13年度比で46%削減)が達成出来るスキームか
欧米諸国が2030年までに削減目標をさらに高め、かなり詳細で具体的な脱炭素スキームに更新している中、この法案のスキーム内容は量質共に抽象的で詳細が未決定
④脱炭素技術開発や市場拡大で欧米に劣後しないか
欧米諸国が、2020年代に脱炭素技術開発や市場拡大を集中させるのに対し、日本のスキームは2020年代を、実質的には脱炭素経済への助走期間としている。
日本の現在のエネルギー事情や経済活動の安定、国民生活を十分考慮したスキームであるが、欧米諸国が脱炭素経済への転換をより早めた現在、20兆円の予算を持つ旗振り役の政府は、新たな的確かつ迅速な対応を余儀なくされている。危機感を持つ先進的な企業は既に対策を進め始めている。


2023年4月30日
生物多様性のCOP、日本も閣議決定へ

昨年末、カナダのモントリオールで開かれた「国連生物多様性条約の第15回締約国会議(COP15)」では、2030年までに地球上の陸域、海洋・沿岸域、内陸水域の30%を保護(30by30)や食料廃棄を半減等、画期的な合意で閉幕したが、これらを踏まえて先月日本でも「生物多様性国家戦略2023-2030」が閣議決定された。
COPと言えば「気候変動枠組条約」が有名だが、そもそもCOP(Conference of the Parties)とは締約国会議の略で、国際社会には多くの条約があり、環境分野では湿地保護の「ラムサール条約」や絶滅のおそれのある動植物の国際取引を規制する「ワシントン条約」のCOPがある。
国家戦略のとしての概要は、環境省と企業、金融、市民団体等の連携を強化し、五つの基本戦略を軸に、2030年までに陸域と海域の各30%の保全(30by30)を目指しながら、自然に配慮した企業経営を促し、経済成長にも繋げたい考えだ。30by30のアライアンス参加者の目標数を500に引き上げ、企業価値の向上や地域活性化も目指す。また生物多様性を保全する民有地などを「自然共生サイト」として、年内に100カ所以上の登録を目標とする。これは「30by30」の世界目標に対し、日本は国立公園など、陸20.5%、海13.3%にとどまるので、目標達成には民間の取り組みが不可欠となるからだ。


2023年3月31日
GX法案&予算が国会通過、明日新年度よりスタート

今月28日、令和5年度予算が国会で成立、過去最大の114兆円となり、GX(グリーントランスフォーメーション)関連予算も目玉の一つとなった。新たな国債「GX経済移行債」を明日新年度から10年間発行する。
主な各省の新年度GX関連予算は下記の通りだ。
経済産業省は、脱炭素関連の企業の技術開発を支援する国の基金を4564億円に積み増し、電気自動車や燃料電池車の購入、充電ステーションの設備導入補助に300億円。
国土交通省は、省エネ住宅購入への融資金利引き下げ優遇措置や建物の脱炭素を進めるために980億円。
総務省は、地方の脱炭素化の取り組みを後押しする新たな支援制度の創設に、1000億円。
環境省は、事業者の電動トラックやタクシーの導入支援等に136億円。
予算配分からもGXスキームが経済産業省主体であることが分かる。
「GX推進法案」も今国会で成立、企業が削減した二酸化炭素排出量に値段をつけ、削減目標を達成できなかった分を排出量取引市場から買い取らせたり、化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに対して排出量に応じて賦課金を求める「カーボンプライシング」を5年後の令和10年度から実施する。



2023年2月28日
GX基本方針等が閣議決定、関連法案改正へ

政府は今月GX(グリーントランスフォーメーション)の実現に向けた基本方針及び電気事業法等の改正案を閣議決定し、通常国会に提出した。ポイントは下記の通り。
・原子力基本法を改正、原発の活用を「国の責務」に
・原発60年超も運転可能に(停止期間を除外可能に)
・廃炉決めた原発敷地内での建替えを具体化
・再生エネの導入を加速するために送電線増強
・GX債を23年度から10年間発行、計20兆円規模を調達
・50年度までに償還を終えるためカーボンプライシングを導入
・23年度から企業が自主的に参加する排出量取引を試験的開始
・28年度に化石燃料の輸入業者を対象に炭素賦課金を導入
今回の改正案は、2011年の福島第一原発事故を受け、原発の運転期間制限や新増設中止等のこれまでの原発政策の大きな転換点となる改正となった。一方で原発事故後、10年以上築きあげてきた原発政策を半年もかけずに大転換するのは拙速との専門家も少なくない。原発の重大事故発生のプロセスに詳しい専門家は、運転期間60年延長においても、原子炉規制委員による原子炉容器の検査が不十分だと、安全面からの運転延長認可取り消しを求める行政訴訟を起こしている。現在は世界的にも53年が最長の実績だ。
2050年現実的に日本でカーボンニュートラルを実現させるには、全ての既設原発を再稼働し、運転期間を60年超としても、10基弱の原発新設が不可欠だという。一方で福島第1原発の事故で一つの地域を失った地震国日本が、「グリーントランスフォーメーション」に原発を入れる事自体、非論理、非倫理との意見も根強い。今回、原発運転延長可能、運転期間は経産省が決定可能、新原発可能への方針転換等、経産省の強いリーダーシップの印象を受けるが、今後国民全体で注視していく必要がある。


2023年1月31日
朗報!オゾン層回復の見込み

オゾン層が数十年後には回復する可能性があるとする「オゾン層破壊に関する科学的評価」報告書が国連から公表された。
地球全体を覆うオゾン層は、生物に有害な太陽からの紫外線の大半を遮る。1970年代から冷蔵庫の冷媒、発砲断熱材、エアコン、スプレー缶などに使われた化学物質「フロン類」がオゾン層を破壊し続けた結果、1985年にはオゾン層が極端に薄くなった穴「オゾンホール」を南極で確認、オーストラリア南部等では直射日光を浴びてはいけない条例等が制定される程の深刻な事態となった。
直ぐに国際的な取り組みが行われ、1989年「フロン類」などオゾン層を破壊する物質の生産と消費を禁止する「モントリオール議定書」が、国連では初めての全会一致、約200ヵ国で批准され、結果としてオゾン層破壊物質の約99%が削減された。
現在のこの国際的な規制が継続されれば、オゾン層は南極で2066年頃、北極で2045年頃、その他の地域では2040年頃までに、オゾンホールが発生する前の1980年の値まで回復するとのことだ。
一方で、今回で10回目となる報告書では、人口の多い熱帯・中緯度地方の成層圏下部のオゾン層が予想外に減少していることも指摘された。また近年フロン類の一種であるCFC-11(クロロフルオロカーボン)の放出量が増加していた問題で、英国大学の科学者チームが、中国の東北地方で新たに排出されていることを突き止め、科学誌「ネイチャー」に掲載している。この地域からのFCF-11放出量は、2014~17年には、2008~12年と比較し110%増加したという。
このままオゾン層の改善が続くと保証されているわけではないと報告書は警告している通り、回復の実現には国際社会における「モントリオール議定書」の徹底的な遵守、圧力、監視が必要になりそうだ。
「国際社会が団結すればプラスの効果があり、この成功は地球温暖化への取り組みにも力強い前例になる」と国連もコメント、一つの環境破壊物質の規制と、全ての産業や生活と関わる脱炭素とは同列には出来ないが、まずはオゾン層の回復の実現を、国際的な取組みで地球環境問題が解決可能な成功例とする必要がありそうだ。
「オゾン層破壊に関する科学的評価」報告書は国連環境計画(UNEP)が世界気象機関(WMO)や欧米政府機関と共同でまとめられた。



コペルニクス大気監視サービス(CAMS)「南極のオゾンホールの大きさの変動、特に2019年から2021年にかけての変動は、気象条件によるところが大きいが、南極のオゾンホールは2000年以降、面積と深さが徐々に改善されている。」

2022年12月31日
日本版の排出権取引&炭素税、実施へ

日本政府は、2050年「カーボンニュートラル」、2030年「地球温暖化ガス46%削減」実現のため、①原発の本格的推進、②カーボンプライシング(CP)の実施、③巨額の投資政策の3つに完全に舵を切ったようだ。
政府の脱炭素戦略の司令塔である「グリーントランスフォーメーション(GX)実行会議」にて、岸田首相は上記基本方針を発表、意見公募を経て、来年2月に閣議決定を目指している。
①の原発推進では、現在停止中の安全審査に合格した原発を順次再稼働、また福島原発事故後、原発の新増設・建替えを凍結してきた方針を改め、廃炉原発を次世代型の原子炉への建替え、また現在最長60年の上限に例外を設け寿命を延ばす方針。
②のCPでは、2023年度から日本版CPを段階的に導入する方針を決め、CO2排出枠を売買する「排出量取引制度」と、エネルギー企業に対する「炭素賦課金」の2本柱だ。
22年9月から有志企業によりテスト運用されている排出量取引市場(GXリーグ)は国内CO2排出量の4割を占める約600社が参加しており、政府はこのGXリーグを段階的に発展させていく。
賦課金については、2028年度から化石燃料を輸入する電力会社や石油元売り会社などに一定の負担を求める制度を導入する。
③の投資では、政府は今後10年間に20兆円、官民合わせて150兆円を脱炭素の取り組みに投資する目標を掲げた。具体的には政府は新たな国債「GX経済移行債」を今後10年間で20兆円程度発行し資金を調達する。将来の取引市場の運営や賦課金の徴収などを担う「GX経済移行推進機構」を新たに創設し、そこでのCP関連の収入を償還財源に充てる制度だ。
今回の一連の穏やかなCP導入は、これまで議論を積み重ねていた環境省でなく経産省が設計しために、現在の日本の産業にとって打撃とならず、導入しやすい配慮がなされている。このことは、企業の排出削減やエネルギー生産性を高める努力を遅らせ、かえって産業構造転換を通じての経済成長を遅らせるという専門家の指摘もある。


2022年11月30日
COP27 ウクライナ危機による後退免れる

エジプトで開催されたCOP27(国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議)は、長年先進国と発展途上国の間で大きな問題であった気候変動による被害を受けた発展途上国の「損失と損害」を支援する基金設立で歴史的に合意し、今月20日に閉幕した。
一方で温室効果ガス排出量の削減目標引き上げや化石燃料の段階的削減について進展はなかったが、ロシアによるウクライナ侵攻で危惧された後退もなかったと言える。
これまでのCOPでは、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えるために、2030年までに二酸化炭素排出量を2010年比で45%削減し、2050年までに二酸化炭素排出量を正味ゼロ(カーボンニュートラル)の目標が掲げられていたが、現状では逆に2030年までに10.6%増える見込みのことから、30年の排出量を19年比で43%減らす目標が示された。
再生可能エネルギーに30年までに年4兆ドル規模の投資が必要との見方が示され、化石燃料からの雇用転換など「公正な移行」も重要視された。
またウクライナは、ロシアによる侵攻後後の温暖化ガス排出量の算出し、人だけでなく、地球環境にも甚大なダメージを与えていることがCOP27で指摘された。


2022年10月31日
カーボンプライシング、現実味を帯びる

これまで日本では絵空事と見られていた排出権取引や炭素税等のカーボンプライシングが現実味を帯びている。今月の政府の第3回GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議においても、「成長志向型のカーボンプライシング」を一丁目一番地に挙げるなど政府の本気度が伺えるが、下記現実化に向けた環境が整ってきているのが大きな要因だ。
一、政府は脱炭素支援の財源のため「GX経済移行債」を発行し、その償還にカーボンプライシングでの税金を当てる支援と税の一体型政策
一、排出権取引もEUに加え、中国・韓国も導入する等、国際的にカーボンプライシングの導入が現実化
一、産業界や国民が気候変動の危機を体感し、日本の2030年度までに炭素排出量46%削減の公約達成への理解の高まり
つまり、脱炭素への国際的な強い潮流と国際公約の義務のため、脱炭素財政支援を行うなら、その財源のカーボンプライシングもやらざるを得ないと政策が策定され、産業界や国民も反対しにくい環境になりそうだ。
また導入前に各企業がGXに取り組む期間を設け、最初は低い負担で導入し、徐々に引き上げていく等、企業や国民の急激な負担を和らげる方針も、導入の現実性を高めている。


2022年9月30日
【環境ニュース】ヨーロッパ、代替エネルギーの現状と進路

EUはこれまでガス需要の46%をロシアから供給を受けていたが今は9%まで激減している。
その代替エネルギーとして、短期的には石炭火力発電や原子力の利用で補い、LNGのタンカー輸入計画も急増中だ。
ドイツ、英国、オランダ、オーストリアでは石炭火力発電の閉鎖を中止、また東ヨーロッパを中心に老朽化が問題にもなっていた原発の再開計画が進む。ドイツのLNGターミナル建設は、今年末から運用が見込まれ、来年以降更によりターミナルを増やす予定だ。
EUは冬に備えて在庫を積み増しており、10月末貯蔵能力の80%の在庫目標が既に83%を達成しているという。
ただ現実的には、今秋からガス不足が予想され、冬の寒さが厳しくなる場合や、さらなるロシアの供給が削減された場合は、備蓄により今年は冬を越せたとしても、来年以降の備蓄が無くなり、エネルギー需給のひっ迫は何年も続く可能性がありそうだ。
LNGの獲得競争は激化し価格は高騰しているが、ドイツは家計と企業の基本的電気料金の凍結措置を講じ、トラス英新首相は家計のエネルギー料金の2年間の凍結を発表等、ヨーロッパ各国は、政府の資金援助と介入で、国内のエネルギー高騰に対処しているようだ。
EUは、短期的には石炭火力の利用で、気候変動に関する国際連合枠組条約(COP)での約束を破り、特に発展途上国等への信用は失いそうだが、今月欧州議会では、2030年再エネ比率の目標を現行の「少なくとも32%」から「少なくとも45%」に引き上げることで合意し、中長期的には脱炭素の目標に揺るぎがない。
ヨーロッパ各国は、直近のエネルギー不足問題に薄氷を踏むように対応しながら、ウクライナと共にロシアと戦うことを選択し、脱ロシアと脱炭素の道を揺るぎなく進んでいる様子である。


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2022年8月31日
【環境ニュース】GX実行会議が日本の指針に

GX(グリーントランスフォーメーション)という言葉が、日本の一つの指針となりそうだ。化石燃料の経済・社会、産業構造を、脱炭素エネルギーの経済社会システムへの変革を意味している。
内閣によるGX実行会議が、岸田首相や関係大臣等出席のもと、先月今月と2回開催され、その具体性はこれまでの「エネルギー基本計画」の内容を遥かに超え、次世代革新炉の新設検討等でも話題になった。
主な会議の内容は、エネルギーの安定供給の再構築と今後10年間のロードマップだ。
予算関連では、カーボンニュートラルに向け、今後10年で官民合わせ150兆円の投資が要とされ、まず政府が10年間で20兆円の予算を投入する方針で、新たな国債であるGX経済移行債の発行や規制・支援一体型投資促進策等、新しい施策が話合われた。また従来の再生可能エネルギーの最大導入、省エネ強化電力システム、電力系統の整備のみならず、原子力の利用、探鉱・資産買収等事業に対する出資等の現実的な議論、また企業家庭の「省エネ・再エネ・蓄エネのセット導入」からはエネルギー危機に強い地域づくりまで、幅広く議論された。



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2022年7月31日
【環境ニュース】電気自動車(EV)海外勢、日本市場参入

「これからの時代は、電気自動車を買うか買わないかの時代でなく、いつ買うかの時代だ」と衝撃的な発言と共に、今月中国のEVメーカー、BYDが日本市場に参入した。今年上半期はテスラを抜いて、EV販売台数世界一になった会社である。1995年に電池メーカーとして創業し、米国の著名な投資家からも支持され、日本の金型会社等も買収しながら、質の高いEVを生産している。
日本でも日産が三菱との共同開発軽EV等「サクラ」の受注台数が今月2万2000台を超えた等、話題となったが、2021年の新車販売台数のうちEVはわずか0.2%、イギリス等の11.6%と比べても、比較にならない現状だ。
日本でなかなか進まないと言われている電気自動車の普及には、「3つの壁」、①航続距離、②充電時間、③電池の劣化、があると言う。
中国は国と会社が一体となった「中国連合」で、EV全体のプラットフォーマーになるために、これまでの内燃機関の自動車業界を牽引してきた日米欧を超える野心を抱いている。
日本も会社、国、国民(購入者)等の協力し合いながら、自動車産業の歴史転換期に乗り遅れない必要がありそうだ。



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2022年6月30日
【環境ニュース】政府の新しい資本主義「環境分野」

今月政府の「骨太の方針・新しい資本主義」が閣議決定され、今後各省庁は優先的にこの方針に組んでいく。脱ロシアや脱炭素という歴史的な転換期の中で、日本はこの30年GNPや実質賃金等上がらない停滞・凋落期から抜け出せるか、或はこのまま停滞・凋落していくか左右する3年間となりそうだ。
国力を伸ばすには、食料やエネルギーの自給率を上げ、輸出で貿易黒字を目指し、インバウンドで外貨を稼ぐとよく言われるか、脱炭素化や環境技術で世界に輸出出来るものはどの程度存在するのか精査する必要もあるだろう。
骨太の方針の環境分野のポイントは以下の通りだ。
・2050年カーボンニュートラルへの経済・社会、産業構造変革へのロードマップを年内に作成
・今後 10 年間に、グリーントランスフォーメーション(GX)※1に 150 兆円超の投資
・将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達
・本年夏に総理官邸に新たに「GX実行会議」を設置し議論を深め速やかに結論
※1 GXとは温室効果ガスの排出につながる化石燃料などの使用を、再生可能エネルギーや脱炭素ガスに転換し、経済社会構造の変革を目指す言葉



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2022年5月31日
EU 2027年までに完全な脱ロシアへ

EUは今月、5年後の2027年までにロシア産化石燃料への依存をゼロにすると決定、ヨーロッパエネルギー政策の大転換となった。
その方法として、①ロシア以外の国からの天然ガス輸入拡大、②迅速な再生可能エネルギーの導入、③省エネ努力の強化を挙げ、新たに2100億ユーロ(約29兆円)を投資も決定、内訳は再生可能エネルギー、省エネ、送電網整備、水素インフラ等だ。2030年までに、再生可能エネルギー目標比率を、現在の40%から45%に引き上げるという。
特にLNG(液化天然ガス)の供給増加が重要な役割と認識、これはEUのみならず、世界の脱ロシアでも鍵となり、特に米国への期待が高まっている。世界の天然ガス埋蔵量の約7割は、米国、ロシア、トルクメニスタン、イラン、カタールで占められており、EUや日本に供給可能な国はカタールや米国だからだ。
脱ロシアを本格化すれば、欧米は新たなガス田の開発や輸出入拠点拡大が必要になり、バイデン大統領も率先して取り組んできた脱炭素政策から、短期中期的には石油・天然ガスの増産を促す、政策転換に迫られる可能性がある。
迅速な再生可能エネルギーの導入では、独裁的国家、新たに中国への依存の面でも注意が必要だ。太陽光パネルに関係する世界のサプライチェーン(供給網)は現在中国が濁り、ポリシリコンの特殊処理工程のほとんどが中国で行われ、ポリシリコン生産の77%、ウエハの98%、セルの83%、組み立て工程の75%を中国が管理している状況だという。
また世界の陸上風力発電設備の50%以上は、世界一の市場を持つ中国メーカーにより供給、洋上風力発電設備についても、こちらも世界一の市場を背景に中国メーカーが急速にシェアを伸ばし、21年のシェアでは中国メーカーが世界シェアの4分の3を占めているのが現実だからだ。



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2022年4月30日
脱ロシア後のエネルギー政策

今年3月の国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会では、ウクライナ危機、脱ロシア、世界の資源高でも、昨年英グラスゴーでのCOP26の温暖化防止取組が再確認され、脱炭素の方向は揺らぐことがなく、脱ロシア策を実行しても50年の脱炭素を実現可能とした。
イギリスは今月エネルギーの安全保障を強化し、最大8基の原発を新設、現在発電容量12GWの洋上風力発電を2030年までに50GWにするという。
しかしイギリスのような好例は稀で、現実的にエネルギー、原材料、食品の価格上昇や、世界経済の下振れリスクは、先進国でも温暖化防止に対する機運を弱め、途上国では脱炭素の優先順位を下げざるを得ない状況に陥る可能性が高い。
脱ロシアでもエネルギーを安定供給するには、アメリカ、ノルウェー、カナダ等の西側資源国の原油生産増加は必須で、この分野への投資の解禁も止むを得なくなる。脱炭素を強力に推進しようとしても、資源価格が上昇しており、高コストや調達が中国に偏る等の問題も起こる。
短期的には脱炭素は足踏みしそうな状況だ。そして否が応でも、原子力発電の立ち位置が、世界のエネルギー政策転換の鍵を握る事になるだろう。
1970年代のオイルショックで、世界は、中東への過度依存のリスクから、エネルギー政策の抜本転換を図ったが、近年の脱炭素、そして今年からの脱ロシアで、オイルショックを遥かに超えるエネルギー政策の抜本転換、難題を迫られそうだ。



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2022年3月31日
脱ロシアと脱炭素

ロシアのウクライナへの侵攻を契機に、世界でのエネルギー政策、脱炭素計画の抜本的な変更が相次ぐ様子だ。
EUは、石油の27%、天然ガス45%をロシアからの輸入に依存しているが、今年末までにロシア産ガスの需要を3分の2削減、2027年までにロシアからの化石燃料輸入ゼロを目指す。
そもそもEUは、欧州内での石炭火力発電の停止や、豊富な天然ガス資源開発の縮小売却等の先駆的な脱炭素計画を、ロシアへの天然ガス等の輸入で補っていたので、この穴埋めが喫緊の懸案事項となっている。
LNGや天然ガスは、石油に比べ、余剰供給能力がなく、陸上輸送では導管施設、海上輸送の際は輸出側では液化設備、輸入側では気化設備が不可欠で、すぐに増産出来るものではないのが問題だ。
中期的には石油や天然ガスの安定供給を図るためには開発投資や液化天然ガス(LNG)への投資の機運も高まりそうだが、平時に戻ればいずれ座礁資産化企業するので、企業も直ぐに新規開発には動けない様子である。
短、中期的に原子力発電のさらなる活用も、フランスや東欧等では進みそうだ。すでにフランスでは2050年までに国内に原子炉6基を新規建設、原発依存度を7割超から5割に下げる発表も撤回した。欧州全体としても原発回帰が進む可能性もある。
ただ短期的には化石燃料の利用は増え、温室効果ガスの排出量とコストは増えそうだが、中・長期的には再生可能エネルギーへの転換が加速しそうである。化石燃料の大幅な価格上昇と、ロシア侵攻で見られたエネルギーの安全保障の観点は、低コストで地産地消の再生可能エネルギーへのインセンティブを決定的に高める結果となった。
化石燃料の高騰、温室効果ガスの排出量の増加、原子力発電への回帰と懸念事項は続くが、ロシアを含む世界全体が協調して築いた脱炭素計画の土台が今回の戦争で崩れてしまうことも大きな危惧である。



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2022年2月28日
脱炭素社会実現に地政学リスクの壁

戦争は最悪の環境破壊と言われているが、今回のロシアのウクライナ侵攻は、これまでの良好に進んでいた2050年カーボンニュートラルへの国際協調に大きな亀裂を作り、欧州の脱炭素の計画の骨を折るものとなった。
そもそも天然ガスの4割をロシアに依存する欧州、特にドイツは6割を依存し、ロシアから北海を経由した海底ガスパイプライン、ノルドストリームで送られてきた。
そして、欧州の積極的な脱炭素計画の支えとなっていたのが、ロシア産天然ガスを直接ドイツに運ぶノルドストリーム2だ。
再生可能エネルギー拡大までの移行期に、不安定な出力を支えるのが天然ガスだからだ。特にドイツは、今年の原子力発電全閉鎖や2035年までの全石炭火力発電所廃止には、ノルドストリーム2からの供給予定を前提としていたと言える。
ドイツをはじめ、欧州はエネルギー戦略を抜本的に見直すことになりそうだ。化石燃料に頼る日本や発展途上国も、天然ガスや原油の高騰に伴い、大きな経済打撃を受け、脱炭素への余裕がなくなることも予測される。国際社会は、脱炭素社会に向けて、地政学リスクという、最初の大きな壁に直面している状況だ。



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ロシア・ウクライナ情勢と欧州の脱炭素 (丸紅経済研究所)
ウクライナ危機でエネルギーの脱ロシア依存は進むのか (日経ビジネス)
ロシアのウクライナ侵攻と脱炭素、コロナ、DXすべて解説 (ヤフーニュース)
商船三井を襲うウクライナ危機、ロシア「北極圏LNG事業」に食い込んだ大博打の勝算 (ダイヤモンド)


2022年1月31日
脱炭素と国の盛衰

2050年カーボンニュートラルへの道のりは、国や企業の盛衰を賭けることになりそうだ。
日本は特に経済の柱でもある自動車産業等の電動化に伴い、エンジン等の内燃機関産業への深刻な影響は計り知れない。また今月石油元売り最大手のENEOSが和歌山製油所を閉鎖する方針を決めたように、エネルギー関連産業や地域経済にも深刻な影を落としはじめている。
今後如何に衰の部分を最小限にし、盛の部分に乗れるかが、国も企業も未来への分かれ道になりそうだ。
そのための一つとして、このカーボンニュートラルを牽引してきた欧州のルールに従うのみでなく、より合理的なルールの提案、追加が大事になる。米中の二大大国の熾烈な競争も加わってきたので、日本はグローバルな目線で生き残りを賭けた戦略が重要だ。NHKの調査では、2050年カーボンニュートラルの政府の難題に対して、6割もの日本企業が「達成可能」と回答した。政府はそれが盛の状況で達成出来るように、力強い外交戦略が必要となる。


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2021年12月29日
脱炭素と金融の動き

今月トヨタ自動車は2030年のEV(電気自動車)の販売台数を350万台、30車種を投入と発表、昨年世界全体のEV販売台数が220万であるので、EVシフトに本気で舵を切った形だ。日本経済の牽引役である自動車業界、そのトップの決断の影響は計り知れない。今後電池の開発に2兆円、EV投資全体で4兆円を投資するという。
先月のCOP26では金融機関の有志連合(GFANZ)が脱炭素化に向け今後30年間で100兆ドル(約1.1京円)投融資できると表明、GFANZの分析では2050年までに温暖化ガス排出量実質実現には、125兆ドルの資金が必要と分析する。ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)等の分析でも同様の数字で、特に石炭火力からの転換を急ぐ電力や、電気自動車(EV)の需要が高い運輸業が特に多額の資金が向かい、形態としてはローンが全体の44%、株式は35%、債券が21%を占める予想だ。
日本でも脱炭素に特化したファンドも好調だ。国内初の「イノベーティブ・カーボンニュートラル戦略ファンド」は2,000億円集めて、半年で18%の騰落率を誇る。ファンドの投資対象は、クリーンエネルギー生成、エネルギー効率化・CO2削減、エネルギー貯蔵分野だ。
また日銀は気候変動対応オペ(公開市場操作)を実施。脱炭素に向けた設備投資に取り組む企業への融資や環境債への投資を対象に、日銀が金利ゼロ%で原資となる円資金を金融機関に供給、貸付予定額は2兆483億円。昨年度補正予算での脱炭素技術の研究開発支援向け2兆円基金の具体的な配分も動き出した。
グリーン投資の対象に原発が入るか、国によりばらばらで国際的な合意が難しく、投資家が判断に迷うケースは多くなりそうだ。欧州内でもドイツやベルギーなどは反原発の立場を明らかにし、フランスは10億ユーロ(約1300億円)を投じて小型原子炉SMRを複数導入すると表明、米ビル・ゲイツ氏もSMRへの出資を通じ推進している。日本政府のグリーン投資計画には原発も対象となっているが、致命的な原発事故を経験し、その後始末も難航しているので、国内での反発も根強い。
また化石燃料へ投資が減少した分供給の増加は限定し、化石燃料の価格が高騰、脱炭素に伴う物価上昇は「グリーンフレーション」国内外で発生している。従来のインフレとは異なり、純粋な経済原則とは別の形なので、長期化への警戒が必要だ。
まさに100年に一度に経済社会の変革期、産業界、行政、政治、国際社会における、脱炭素に向けた上手い舵取りが求められている。



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2021年11月30日
COP26 総括(イギリス グラスゴー)


COP26 (イギリス グラスゴー)が閉幕した。二百ヵ国近い世界ほぼ全て国が参加した会議で「グラスゴー気候合意」に達し、内容少しずつでも過去より前進している歴史的な会議となった。特に先進国特にG7は脱化石燃料文明に完全に舵を切った形だ。議長国イギリスが力を入れた森林資源の増加、電気自動車の普及は一定の成果があったが、一番の力を入れた石炭火力発電の「段階的廃止」は、インドや中国による反対、会議の紛糾で、一日の延長を経て、「段階的削減」となった。
グラスゴー気候合意のポイント
・1.5℃以内に抑えると強調
・途上国支援の強化
・石炭火力発電の段階的削減
特記事項
・GFANZ(金融世界同盟:1京5000兆円規模)からの環境投資
・気候変動と生物多様性の統合化
・市場メカニズム(パリ協定6条)の前進
COPでの途上国支援においては、再生可能エネルギーが、経済システムの中で結局安価で安全となるように、イノベーションに資金投入をすることが、途上国の持続可能な削減に寄与するだろう。
日本の2030年における2013年比での46%削減は、現在は14%の削減状況で、火力発電が四分の三を占める電源構成のままでは非常に厳しい目標だ。ただ政府から危機感を感じられないのは、稼働可能な原発が多く存在し、最後はそこに頼る思惑も考えられる。
日本はCOP26では存在感を示せなかったが、例えばトヨタが推し進める水素エンジン車は、世界の内燃機関に関わる産業が残せるので、このような合理的な発言を今後世界に向けて強く発信することが必要だ。



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2021年10月31日
米の脱炭素政策に暗雲


政権の最重要政策の1つと位置付ける気候変動対策が盛り込まれた、バイデン政権目玉の二大法案の議会での成立に暗雲が立ち込めている。
今後10年で投じる、1兆ドル(約114兆円)規模のインフラ投資法案と、3兆5000億ドル(約400兆円)規模の大型経済対策法案共への議会での決議でだ。
大型経済対策法案は、半減の1兆7500億ドルで譲歩し、その中で気候変動対策として5550億ドル(約63兆円)を投じる。
大型歳出法案では、クリーン電力を増やす電力会社に助成金、未達成の会社に罰金を科す「クリーン電力プログラム」や再エネ利用・創出の事業者や住宅所有者、電気自動車購入ステーションへの「税額控除税」、「充電ステーションの整備」等が盛り込まれてが、クリーン電力プログラムは外れる様子だ。
バイデン氏は「2030年に温暖化ガスの排出を(05年比)50~52%減らすのに十分だ」と主張しているが、米主要環境団体の試算によると、30年の削減率50%のうち4?5%を占める最も多い部分だと言う。
コロナ危機対応で3月に1.9兆ドルを一気に費やしたのと異なり、今回は10年で1.75兆ドル。しかも財源は基本的に増税で賄う道筋も立てた。
インフラ投資法案では、再生可能エネルギーに重要な電力網の整備等が含まれており、上院では可決され、下院での最終可決を待つ。



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2021年9月30日
脱炭素社会での水素の動向


東京オリパラの聖火台でも水素が使われる時代、今月は脱炭素社会の実現で鍵を握る水素の最新情報にフォーカスする。脱炭素政策を強力に推し進めるバイデン政権に加え、本家のEUの脱炭素政策も、今週のドイツ総選挙で第3党に躍進した緑の党が連立政権に加わる可能性により、より一層強くなる方向だ。
アフリカ諸国でもその日照と風の利点をから、欧州市場を目指して、再生可能エネルギーと組み合わせた「グリーン水素」事業が相次ぎ、サウジアラビアでも国家事業の核に水素事業を掲げた。
日本では昨年12月「水素バリューチェーン推進協議会」が立ち上がり、今8月時点で約250社・団体が参加し、政策提言など具体的な活動を行っているが、昨日の自民党の総裁選にて岸田総裁が決定したことにより、脱炭素、水素重視の方向は変わらないが、河野大臣が掲げていたような、脱炭素、水素社会への加速度的な流れ、大きな舵を切ることはなさそうだ。
今後世界の脱炭素社会への変革から日本が遅れることがないようにすると同時に、トヨタの豊田社長が「敵は内燃機関ではなく炭素」と言うように、カーボンニュートラルに向けて電動化のみにシフトすることなく、日本の強みでもある、ハイブリッドや内燃機関などを含め、様々な選択肢を模索し、それらを世界へ発信していくのも重要だ。それが国内外の自動車産業等の炭素排出産業に関わる人々の雇用や基幹産業を守り、脱炭素社会実現への抵抗を最小限にする方策である。



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2021年8月31日
早急な脱炭素化による問題点


米国バイデン政権で気候変動を担当するケリー大統領特使(元国務長官)が来日し、「日米気候パートナーシップ」に基づき、再生可能エネルギー、水素、脱炭素インフラ輸出等の意見を交わし、今秋11月の英国グラスゴーでのCOP26に向けた協力も確認した。
欧米では政府も産業界も脱炭素化へ全力で移行している様子で、日本にとっても脱炭素化は輸入化石燃料への依存度を下げる等、エネルギーコストや安全保障上の恩恵がある。
しかしこの4月に政府が打ち出した2030年に温室効果ガスを46%削減の目標、それに基づくエネルギー基本計画では、期待の洋上風力発電等は稼働まで課題も多く時間がかるため、太陽光発電の増量を柱としたので様々な問題が生じ始めている。太陽光発電パネルは現在中国等から8割も輸入に頼り、太陽光発電や電気自動車の製造原料や資源の多くも同様に輸入に頼っているが、世界的な脱炭素系の資源は、高騰や資源ナショナリズム化も起こり始めた。自然エネルギーの大量導入や、その発電変動に対応する、送電網の拡充整備と広域運用、エネルギー貯蔵技術等の需要側の調整力を活用する電力システムへ転換も喫緊の課題で、この基本計画に現実性があるのか専門家の疑問の声も多い。
ただ政府の脱炭素化への動きも止まらない。今月脱炭素2兆円基金から、燃料アンモニアの導入事業に最大688億円を充て、水素活用の製鉄事業は1935億円を配分する方針を決めた。今後数年の国策の質の高さや民間の変革が今後の日本経済、日本社会の分岐点になる模様だ。



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2021年7月31日
リユース市場が多様な形態で急拡大


リユース市場が多様かつ大きな広がりを見せ、SDGs等の流れに沿った新しい経済社会のスタイル構築しているようだ。
中古・リユースの専門メディア、リサイクル通信によると、中古売上ランキング2020年度において、上位10社では、コロナ禍においても半数が増収を遂げている。これは主に実店舗を中心にネットも利用したスタイルだ。またヤマダ電機が本格的に中古家電販売店を広げる等の強みを活かした参入や、特色のあるリユース店のM&Aも活発の様子だ。
メルカリ、ヤフオク等のフリマアプリ等を利用したリユースも大きく広がっている。昨年の経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によると、CtoC取引市場の規模は約1兆7,407億円で前年比+9.5%と推計、今年はそれ以上の予測だ。電子機器利用者の市場調査会社のMMD研究所が今年発表した「2021年 フリマサービス・アプリに関する利用実態調査」によると、モノの売却で利用する場所はリサイクルショップ(実店舗)が50.9%、フリマアプリが35.5%、買い取り専門店(実店舗)が32.3%との結果となった。



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2021年6月30日
政府骨太方針「グリーン社会の実現」&IEAの脱炭素戦略固まる


日本政府は6月、骨太方針2021を閣議決定した。日本の未来を拓く4つの原動力として、グリーン、デジタル、地方創り、少子化対策を挙げ、「グリーン社会の実現」を1番目に位置付けている。2050年カーボンニュートラル、2030年度のGHG削減目標の実現に向け、下記施策を徹底する方針だ。
①脱炭素を軸として成⻑に資する政策を推進
②再⽣可能エネルギーの主⼒電源化を徹底
③公的部⾨の先導により必要な財源を確保しながら脱炭素実現
またIEA(国際エネルギー機関)の脱炭素工程表が、世界に衝撃を与えている。IEAは半世紀に渡り化石燃料等のエネルギー安全保障等で大きな役割を担ってきたが、脱炭素に大きく舵を切った。主なポイントとして、下記7つを挙げている。
①化石燃料投資の即時停止
②風力&太陽光発電を年1000ギガワット増設
③内燃機関車の新規発売停止(15年後)
④石油・石炭火力発電の廃止(20年度)
⑤再生可能エネルギー比率7割(30年度)
⑥年500兆円の新規投資(今後10年間)※現在年100兆円
⑦30年後に、石炭90%減、石油 75%減、天然ガス 55%減
脱炭素社会への転換は、気候変動の現実的な脅威への危機感をベースに、各国の政治経済的な思惑、ウオール街や金融業界の利害から市民運動の要望まで、皆方向が一致し、不可逆的な流れとなっているが、その目標と現状とのギャップを埋める現実的な段取りがまだ描かれていないのが現状だ。



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2021年5月31日
脱炭素社会へ向け日本も本格スタート!


日本でも脱炭素に向け全方面で動きが活発だ。
国会では、2050年までに温室効果ガス排出ゼロ目標を明記した改正地球温暖化対策推進法が今月26日に成立、政府目標を法律に格上げすることで、政権交代などがあっても政策の継続性を担保する。
改正法の柱は地方での再生エネの普及促進で、都道府県や中核市以上の自治体には、地域の実行計画に再生エネの導入目標を盛り込むよう義務づけ、中小規模の自治体には努力義務を課す。また自治体が発電施設を誘致する「促進区域」を設定し、住民と事業者が事前に協議して合意を得られた計画を認定できるようにする。
各省の動きも活発だ。経済産業省等は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電気を調達しやすくするため、新たに専用の取引市場をつくる。再生エネで発電したことの「証明書」を公的機関が発行し、それを一般の企業が買えるようになる。
国内で出る温暖化ガスの8割を企業・公共部門が占めるため、主要企業の動きも活発だ。日経平均採用銘柄225社中少なくとも4割の85社が4月末までに目標を定めた。トヨタでは、水素をこれまでのエンジンで燃焼させる技術を開発、今月のレースにも登場した。
ソニーでは、原材料や部品の調達先企業や製造委託先の排出削減を促す。伊藤忠は石炭火力発電からの完全撤退を決定、太平洋セメントは10年間に1000億円もの環境投資を行い、まず廃熱発電設備の導入や二酸化炭素回収技術の開発などに挑む。



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2021年4月30日
気候変動サミットが開幕 2050年目標が2030年に前倒しへ


世界最大の温室効果ガス排出国である中国は、2060年までに排出量を実質ゼロとする「カーボンニュートラル」達成目標を改めて強調、石炭火力発電所を「厳しく管理する」と表明。バイデン大統領はサミットの開会の挨拶で、今が「勝負の10年」と述べ、世界各国に対応を訴えた。文明史の観点からも、世界及び日本の経済社会が大きく変わる10年に位置付けられそうだ。



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バイデン大統領

各国の温室効果ガス排出量の推移
(C)BBC



2021年3月31日
米バイデン政権 220兆円規模の予算で、脱炭素社会等への道筋を公表


今月トヨタ自動車の豊田会長が、日本の脱炭素化が遅れると、国内自働車メーカが他の国に工場移転することになり、将来雇用100万人を失うとの強い危機感を表し、エネルギーのグリーン化の必要性を強調した。未だ8割近い火力発電で作られている自動車が将来輸出出来なることを懸念してのことだ。
長らく環境は、企業のブランドイメージを上げる程度と捉えていた会社も多かったが、今後は経営の中核を担う要素に変貌した。その理由は大きく五つ考えられる。
①パリ協定、国連のSDGs、日本政府の2050年カーボンニュートラルに見られる国際社会や政府の本気の動き
②機関投資家や株主等、資本市場からの強力な圧力
③国内外における異常気象の体感
④気候変動やコロナ等の将来リスクを軽視した米前トランプ大統領やブラジル大統領の失敗
⑤若者や環境NG0、著名人等による積極的な啓蒙活動とSNS等を通じた連携
本日米バイデン政権は、今後8年をかけた2兆ドル(220兆円)規模の環境社会を軸とした具体的なインンフラ支出と成長戦略を公表する。ここ数年世界各国が脱炭素社会の方向に向き、位置につき用意していたが、米国の具体的なスタートダッシュで、砲が打たれそうだ。



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バイデン大統領

(C)Newsweek



2021年2月27日
脱炭素社会へパラダイムシフト


世界でカーボンニュートラル(温暖化ガス排出の実質ゼロ)等の具体的な目標を掲げる国や企業が相次いでいる。EU、米国、日本が2050年、中国も2060年までを達成目標とした。
企業の動きも目覚ましく、米国アップル社は2018年にカーボンニュートラルを達成、2030年までに全てのサプライチェーンにもカーボンニュートラルを求めることを決定、ヤフージャパンも使用電力を2023年度までに全て再生可能エネルギーに切り替えると発表、経団連会長は「脱炭素を優先、気候変動、経済環境も壊しかねない」と公言した。
金融でも大手米資産運用会社は、すべての企業に対し50年までに温暖化ガス排出の「ネット(実質)ゼロ」の達成計画を打ち出すよう要求、日本の金融庁も気候変動対策を銀行の監督項目に追加し、企業の再エネ資金調達を促すと同時に、気候変動に関する情報の開示を求める。今官民で「脱炭素」の動きが過去類を見ない程本格化している。脱炭素が企業の経営課題の「本丸」、会社存続の「最低条件」となっていくのは必至だ。
日本は50年までの目標達成のために、14分野のグリーン成長戦略を発表したが、特に「自動車・蓄電池産業、洋上風力産業、半導体・情報通信産業」が優遇されているという。他の半数以上の分野で数値目標もないのは、まだ付け焼刃的な成長戦略の感も否めない。加えて懸念されることは、政府は新車の電動自動車化を、2035年までに公言したが、全世界で一気に自動車を電動化販売した場合、製造に使われるレアアース、ニッケル、リチウム、コバルト等、資源の安定確保は可能なのか。また石炭等の化石燃料に関わる産業や一世紀以上産業界の中心だったエンジン等の内燃機関関連産業の衰退、雇用の縮小等で社会安定が損なわれることはないのか、急速な変化に伴う懸念事項は多い。
社会不安不満が高まった場合、トランプ政権の誕生のように、極端な反脱炭素の政権や潮流が生まれ、社会の分断や不安が起こるリスクにも対策が必要だ。今後10年が脱炭素をベースとした新しい経済社会システムの構築時期となる。コロナ禍の次の試練となりそうだが、人類は十分に乗り越えられる能力を持っていると思われる。

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脱炭素

(C)DIAMOND



2021年1月15日
2050年の温暖化ガス排出量ゼロに向け、政府始動


先月25日に、政府は2050年に温暖化ガス排出量を実質ゼロにするための工程表をまとめました。
洋上風力、電気自動車、水素など14の重点分野を定め、再生可能エネルギーの比率を今の3倍の50~60%に高める方針です。
全体としては産業・運輸・生活の各部門を化石燃料から電化、家庭部門も住宅・建築物は30年までに新築平均で実質ゼロ、自動車は30年代半ばに全ての新車を電気自動車(EV)にする予定です。
脱炭素への投資を成長のてこにもする戦略で、年190兆円の経済効果を見込んでいます。これらの実現には、技術革新、規制改革はもちろんのこと、正しい見通しの政策や産業構造転換に伴う社会保障まで必要になりそうです。
また環境省は今月召集予定の通常国会に「2050年炭素実質排出ゼロ」を明記した「地球温暖化対策推進法改正案」、「プラスチックごみの削減・リサイクルを強化する新法案」等の4法案を早速提出、小泉環境大臣はカーボンプライシングの導入にも強い意欲を見せています。

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小泉環境大臣 年始の記者会見



過去の環境 News
2020年12月02日
【環境】

世界的に評価の高い日本のブループラネット賞受賞者2名決定


国際的にも評価の高い、先見性と歴史のある環境分野のメジャーな賞です。

デイビッド・ティルマン教授(米国)
1949年7月22日生まれ
ミネソタ大学 教授 大学理事
カリフォルニア大学サンタバーバラ校 卓越教授
農業と食習慣が健康と環境に与える影響について精査し、植物ベースの食物は人間の健康と環境の両方に利があるのに対し、赤身の肉類は人間の健康にも環境にも悪影響を与えることを示した。密接に関連している食習慣・健康・環境のトリレンマを地球規模の問題ととらえ、人間の健康にも、地球環境にもよい農業の実践と食習慣への移行を唱道している。

サイモン・スチュアート博士(英国)
1956年7月14日生まれ
シンクロニシティ・アース戦略的保全部長
元 IUCN 種の保存委員会議長
IUCN 絶滅危惧種レッドリストのためのカテゴリーと定量的な基準の開発を主導し、評価対象種の拡大に顕著な貢献があった。この堅固な科学的基盤により、レッドリストは、最も信頼性が高く、広く利用される種の絶滅リスクに関する情報源となった。また、世界両生類アセスメントを立ち上げ、統括し、両生類の減少はその生息場所だけでなく、自然環境が損なわれつつあることを示していると警鐘を鳴らした。

ブループラネット2020 特設サイト




デイビッド・ティルマン教授(米国)受賞概要&インタビュー



サイモン・スチュアート博士(英国)受賞概要&インタビュー



2020年11月16日
【環境】

米国バイデン新政権の環境・エネルギー政策で世界は一気に脱炭素化へ


米国のバイデン政権誕生により、エネルギー・環境政策が激変、世界は脱炭素化に向けて一気に舵が切られそうです。
その政策内容は、専門家からも「今までの大統領でもっとも過激」と言われています。
パリ協定復帰はもちろん、米国として2050年までに100%クリーンエネルギー、温室効果ガス排出実質ゼロの達成をビジョンとし、クリーンエネルギー関連に4年2兆ドルを投資、工程表も示しており、就任初日に中・小型車の100%電気自動車化等、10の気候変動対策を就任初日に大統領令に署名する予定です。
化石燃料業界等のエネルギー産業には厳しい姿勢を見せ、規制強化を政策に掲げており、石油・ガス市場は一定の影響を受けるでしょう。ただ上院が共和党過半数となりそうなので、ビジョン通りに進まないことも予想されます。
トランプとバイデンの選挙戦の背景には、旧産業形態の方々にトランプが上手く乗ったとも見ることも出来ます。旧産業形態の方々はより窮地に追い込まれ、大きな不満の爆発や米国の分断の引き金にならないかが懸念されています。


良記事選




THE BIDEN PLAN FOR A CLEAN ENERGY REVOLUTION AND ENVIRONMENTAL JUSTICE



2020年2月16日
【環境】

世界の極地での温暖化現象の報道相次ぐ


海外のメディアでは、特にこの数ヶ月、地球の極地での温暖化現象の報道が増えている。
ネパール・タイムズ紙は「ヒマラヤの山々がアイスクリームのように解けている」と1分間の動画(下記)を公開、急激な雪解けの様子をはっきり伝えていた。氷河の融解が進むと水資源の利用も困難になり、地域住民の生活にも深刻な打撃を与える。
また米国国立大気研究センターの科学者は北極の永久凍土の「急速融解」の温暖化への影響が従来説の2倍との研究報告を発表。これは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が、永久凍土の融解を十分考慮していない予測のため、今後より対策の厳しい状況となった。
フランスのマクロン大統領は今月、温暖化の影響で消失の危機にあるアルプス山脈のモンブランふもとの氷河をじかに視察。この氷河は毎年8~10メートルずつ後退しており、1850年当時と比べると2キロも短くなっている。気候変動にあらがい環境を保護するため「世紀の闘い」が必要だと呼び掛けた。
米海洋大気局(NOAA)も今月、今年の1月は統計を取り始めて以来の141年で最も温暖だったと発表。これまで時折温暖になるのはエルニーニョ現象が影響していたが、今回はその現象は観測されていないという。また2010年代は観測史上最も暑かったとNASAと共同発表をした。
各温室効果ガス対策の前倒しと気候が変動した環境への順応対策が、予測より早く必要になる可能性が高まっている。




昨年末のヒマラヤの急激な雪解けの様子
(C)Nepal Times


2020年1月12日
【環境】

オーストラリアで空前の森林火災 深刻な生態系破壊とCO2発生量


オーストラリアでこれまで経験のない大規模の森林火災が大地を焼き続けている。これまでのまばらな火災と違い、地域全体を完全に燃やし、過去例を見ない深刻な生態系破壊の状況だ。現段階(1/9)で、焼失面積は北海道を超える約1千万ヘクタールに達し、野生動物が推定10億匹、内数万匹のコアラが焼死。人的被害は約25人が焼死、焼失家屋2000棟以上と拡大している。

オーストラリアの気象当局の発表によると、去年1年間の平均気温は平年を1.5度上回り23.3度と、観測史上最も高くなった一方で、1年間の平均降水量は277.6ミリと平年よりも40%ほど下回り、最も乾燥した1年となり、気候変動が熱波や森林火災の危険性を増大させる要因の1つになっていると指摘した。

この森林火災によるCO2の発生も深刻な状況で、既に現段階で森林火災では過去最大との試算もある。モリソン首相の対応の遅れやこれまでの気候変動に対する消極的な姿勢が国内で批判されている一方で、国内外から多くの支援の寄付金が寄せられ始めている。



オーストラリア森林火災1
オーストラリア森林火災2
オーストラリア森林火災3
(C)ABCNEWS AU

2019年12月20日
【環境】

COP25 各国の厳しい現実と温度差が露呈


平均気温の上昇を産業革命前に比べて2度未満に抑える国際枠組み「パリ協定」が2020年から本格運用される。その実施を前に、国連気候変動枠組条約の第25回締約国会議(COP25)が、2019年12月2日から2週間の会期で、スペイン・マドリードにおいて開催、過去最大の2日延長して閉幕した。

今回のCOP25の主なポイントは主に下記2点だ。
① 積み残されたパリ協定のルールに合意
② 各国が温室効果ガスの削減目標を強化

COP24にて既にパリ協定の実施に必要な大筋のルールの詳細が決められていたが、積み残された点の「市場メカニズム/非市場メカニズム」のルールや、気候変動の影響が受けやすい国に「損失と被害」が発生した場合どのような国際的協力体制を作るか等は、今回も再び合意出来ず先送りされた。
また削減目標は2020年の2月までに、各国が再提出することが決まっており、その際に「強化」して持って来ることを今回のCOPが決定したかったが、合意文書としては、現在の各国の削減目標と、「パリ協定」の目標の間に「大きな差」があることを認識しつつも、その差を縮めることが「急務だ」と言及するにとどまった。

国連のグテレス事務総長は「がっかりした」との声明を発表。「国際社会が気候危機に立ち向かうための重要な機会を失った」と指摘した上で、「全ての国はあきらめてはならないし、私もあきらめない」と述べた。



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【環境P.R.】

SDGs(エスディージーズ)を広めよう!
SDGs(Sustainable Development GoalsmSustainable Development Goals)は、2015年国連総会で採択された、2030年に向けて持続可能な開発へ世界を変革する行動計画と具体的行動指針。17の目標(下記)と169の達成基準からなる。

SDGの目標


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